周囲の方ができること

身近な人が天使ママ天使パパとなってしまった、というみなさんに知っていただきたいことがあります。

 

流産・死産や新生児死の経験がない方にとって、赤ちゃんが亡くなった知らせを受け「なんて声をかけたらいいかわからない」「なにをしてあげたらいいかわからない」と思われることは、当然で無理もないことと思います。

 

赤ちゃんを亡くした天使ママ天使パパは、それまでどんなに前向きで明るくおおらかな性格の人だったとしても、周りが良かれと思ってかけてくれた言葉に、より絶望を深めてしまうことが多いのも事実です・・・。

そのような言動をされた人には、残念ながらもう心を開くことができなくなってしまったという天使ママもいます。

 

でも、それは勇気を出して声をかけた方が悪いわけではなく、ましてや天使ママ天使パパたちが悪いわけでもありません

 

このページでは、赤ちゃんを失った後の天使ママ天使パパの心身の状態をご紹介しますが、これらのことを知っていただいたとしても『同じ悲しみ』を本当の意味で理解することは、ほぼできないかもしれません。なぜなら、おそらくあなたの想像をはるかに超える感覚だからです。

 

また、天使ママ天使パパのそれぞれの価値観や人生観、同じ言葉でもどんな関係性のどんな人からの言葉なのか、また赤ちゃんとの死別後は神経がとても敏感になっているので、その日その時の心身の状態などによっても、どうしても受け取り方が変わってしまいます。

 

このように言うと、ますますどのようにしたら良いかわからなくなる方もいらっしゃるかもしれません。あなたなりに考えた結果「そっと見守る」という選択も、もちろん間違いではありません。ただ、赤ちゃんのことを「無かったかのように振る舞われる」ことは、赤ちゃんの存在を無視されているように感じてしまい、孤独感を強めてしまうということも心にとどめていただけたらと思います。

 

まずは、赤ちゃんを亡くした天使ママ天使パパたちが、どのような状態なのか知るところからはじめてください。それだけでも救われる方が必ずいます。このページを読んであなただからできることを「考えて」いただけたら嬉しく思います。

 

なお、天使ママ天使パパに関係が近い程あなた自身も悲しみを抱えている状態です。読んでいて疲れを感じたら決して無理をなさらないでください。

*グリーフ反応(悲嘆反応)については「グリーフ・サバイバー」というホームページにとても詳しくまとめられています。悲嘆の状態にある方の力になりたい、という方はぜひご覧ください。関西天使ママサロン神戸 エンジェライトも自助サポートグループとして掲載していただいております。

*このページを作成するにあたり、何名かの天使ママ達にご協力いただきました。改めまして、本当にありがとうございます。

赤ちゃんを亡くした直後の親のさまざまな悲嘆反応

一般的に「グリーフ(悲嘆)」と言われますが、大切な人を亡くした方は心にも身体にもさまざまな反応が出ることが知られています。このホームページでは「赤ちゃんを亡くした親」にフォーカスをして、ご紹介いたします。すべての人が同じ反応を示すわけではないですが、複数のこのような反応が一気におそってきます。また、これらは正常な悲嘆反応であり、日本人の悲嘆反応がおさまるまでは平均して4年半かかる(参考文献:「産声のない天使たち」朝日新聞出版とも言われています。(赤ちゃんを亡くした状況やその後の支援状況によってはもっと長くかかることも)そのこともふまえてご覧ください。

 

*悲嘆反応の強さや程度などによっては、専門の医師にご相談することも選択肢の一つとしてお考えください。

心理的・認知的な反応

●赤ちゃんが亡くなったことを現実として認識できない(非現実感、強烈なショック)

●自分がした何かが原因で赤ちゃんが亡くなってしまったのではないかと感じる(罪悪感)

●自分を取り巻く世界から切り離されたような強い孤独を感じる(孤独感)

●どうして自分の子だけが亡くなってしまったのか納得することができない(理不尽・不平等感)

●人の反応に恐怖を感じる(安心感の喪失)

●亡くなった赤ちゃんが生きて戻ってくることを望む(思慕)

●赤ちゃんに永遠に会うことができなくなった強い寂しさを感じる(思慕)

●医療者や家族などが適切な対応をしてくれていたら助かっていたのではないかと感じる(怒り)

●妊婦さんや小さな赤ちゃんを抱えた人をうらやましく感じる(嫉妬)

●生きる方法がわからなくなり途方に暮れる(希望の喪失、完全なる絶望)

●自分は生きている価値がないと感じる(自信の喪失・無力感)

●生きていく意味がわからなくなる(虚無感・スピリチュアルペイン

●もう生きていけないと心の底から感じる(生命力の低下・喪失・スピリチュアルペイン

 

など

身体の反応

●胸がつぶれたように息がしづらい

●のどに何か詰まったような感じがする

●頭がくらくらする

●徹夜明けのような疲労感が取れない

●眠れない日がつづく

●食欲がない

●起きあがる気力が出ない

●身体のあちこちに痛みを感じる

●手が震える

●動悸がおさまらない

●過呼吸

●めまい

●突発性難聴

 

など

 

*このような反応が正常なのか分からず、自分の身体はおかしくなってしまったという不安と恐怖に襲われます。またこれらは自律神経の反応や、副腎疲労の症状であるため自分ではコントロールができません。

母親としての身体の反応(中期以降の死産)

●出産・手術後の出血や悪露

●会陰切開や帝王切開などの傷の痛み

●出産後の体力の低下

●母乳が出る

●生理が不安定になる

●ホルモンバランスの乱れ

●抜け毛が多くなる

 

など

 

*赤ちゃんを亡くしたのに身体だけは産後と何も変わらず同じです。その身体の状態も天使ママにはとてもつらく苦しいと感じることです。

行動としての反応

●赤ちゃんを探す

●遺骨や写真、ぬいぐるみなどに話しかける

●長い間涙が止まらない

●家にひきこもる

●落ち着かない

●過活動になる

●周囲の人と距離を置く

●赤ちゃんや妊婦さん、小さい子供を見ることができない(写真や動画を含めて)

●「この気持ちを分かる人はいない」とひとりで悲しみや苦しさを抱え込む

 

など

心に痛みを感じる言葉

これから挙げる言葉は、実際に赤ちゃんを亡くした方によくかけられる言葉です。すでにこれらの言葉をかけてしまったという方は、ショックを感じられるかもしれません。でも、天使ママ天使パパたちは「なんとか励ましてあげよう」というあなたの気持ちはちゃんと受け取っています。「 」の言葉のあとに「→」で天使ママ天使パパがその時に感じる気持ちを補足しています。

 

*赤ちゃんとの死別後日の浅い方は、ショックを受ける場合がありますので閲覧は十分にご注意ください。フラッシュバックや苦しさを感じる方は、無理な閲覧はお控えください。

赤ちゃんを亡くした直後

「わたしも親(祖父母やペット)を亡くしたからつらい気持ちはわかるよ」

→悲しみの大きさは比べられませんが、それでも他の家族を亡くすのとは違うと感じています

→あえて言うなら「流産」と「死産」「新生児死」もそれぞれ少し違う感覚かもしれません

 

「思ったより元気そうでよかった」

→心配をかけないように元気なように振る舞っています

 

「大丈夫?」

→大丈夫と言わないと心配かけてしまうと思ってしまいます

 

「赤ちゃんは長く生きられない運命だったんだよ」

→それでも生きていてほしかったと苦しくなります

 

「あなただけでも生きていてくれてよかった」

→自分だけ生き残ってしまったことに強い罪悪感を感じています

 

「次の子を産めばいいよ(来てくれるよ)」

→亡くなった赤ちゃんは別の子の命に替えられるものではないと感じています

 

「上の子がいるからまだ良かったね」

→上の子がいる天使ママは悲しみを押さえ込み余計に苦しむ傾向があります

 

「あなただからこそ、神さまに選ばれて起こったことだと思う」

→天使ママは「自分が母親じゃなければ赤ちゃんは生きられたのではないか」と罪悪感を感じています

 

「全てのことには意味があって必然だからね」

→赤ちゃんに出会えたことには大きな意味を感じていますが「必然」という言葉は受け入れることができません

 

「わたしだったら耐えられない。強いね」

→耐えられてはいません。それでも生きるしかできないから生きているという状態です

→今すぐ赤ちゃんのところへ行きたいと思っていますが、誰かを亡くす経験を身近な人にさせたくないとも思っています

 

「人はみんな死ぬものだから」

→赤ちゃんが自分より早く亡くなるということは受け入れられていません

→赤ちゃんが亡くなったことを受け止めるにはとても長い時間と勇気が必要です

 

「時間が経てば楽になるから」「そのうち時間薬が効いてくるから」

→赤ちゃんのいない時間を生きていくだけでも苦しいと感じています

→赤ちゃんが生きていた時間から遠ざかることを「こわい」と感じています

 

「がんばって」

→すでに必死に頑張っていてこれ以上頑張れないと思っています

*赤ちゃんや大切な人との死別を経験している方からの言葉であれば心強くも感じます

少し時間が経ってから

「元気にしてる?」

→以前の「元気」の状態には戻れないと感じています

 

「前を向いてくれるようになって良かった」

→進んだように見えて実際には前を向けない自分に強い自己嫌悪を感じている人も多いです

 

「いつまでも泣いてると赤ちゃんが悲しむよ」「赤ちゃんはママの笑顔が好きなんだよ」

→自分は赤ちゃんも悲しませているのかと余計に苦しくなります

→もう心から笑えることはないだろうと感じています

 

「悲しいのはあなただけじゃない」「もっと悲しい思いをしている人はいる」

→自分のこの悲しみはひとりで抱えなくてはいけないんだと思ってしまいます

→いつまでも悲しんでいる自分はダメな人間なんだと感じています

 

「もう亡くなったんだからしょうがないじゃない」

→赤ちゃんの存在を軽く扱われたように感じ悲しく思います

 

「気持ちを切り替えたら楽になるよ」「後ろを見ないで前を向きなよ」

→今は「前を向くだけで苦しい」と感じます

 

「悲しいことは早く忘れたほうがいいよ」「ずっと赤ちゃんのことを抱えて生きていくの?」

→赤ちゃんのことは「絶対に忘れたくない」と感じていますし亡くした赤ちゃんのことは一生忘れません

赤ちゃんの存在を知ることができたことは「嬉しい」し「幸せだ」と感じています

心を開けないと感じる言葉

*次のページも実際に天使ママにかけられた言葉です

*赤ちゃんを亡くした経験を持つ方は読むだけでショックを受けるかもしれません

*特に日にちの浅い天使ママは閲覧をご遠慮ください

できるだけ避けてあげてほしいこと

天使ママ天使パパとなった方たちは、妊婦さんや他の赤ちゃんを見たり、友達や家族親戚の妊娠・出産報告について、もちろん喜ばしいことだと感じますが、同時にどうしようもない「苦しさ」を感じます

 

妊婦さんや小さい赤ちゃんがいらっしゃる方、妊娠・出産報告のある方は、赤ちゃんを亡くした方への接し方について、なるべく大きなお腹や赤ちゃんを目に入れないようにしたり、報告のタイミングを伺うなど、どうぞ十分過ぎるくらいに配慮してあげてください。妊娠・出産の報告が遅れても、傷をえぐられるような想いをするよりはよほど救われます。

 

赤ちゃんと死別した直後は、同じ天使ママの妊婦さん時代の写真であっても、またお腹の中で赤ちゃんを亡くした方にとっては「目を開けている赤ちゃんや子供の写真」だけでも、強い苦しさを感じます。ましてや、生まれたばかりの新生児を抱っこしたり、泣き声を聴くことは、本当に頭がおかしくなりそうだと感じる方も多いです。

 

先に記載したように日本人の悲嘆反応がおさまるまでは平均して4年半かかると言われています。「もう1年経ったから・・・」とは思わないであげてください。お店や電車内などで、妊婦さんや抱っこ紐で抱えられた赤ちゃん、ベビーカーで楽しそうに手足をばたつかせる赤ちゃんを見ないようにするだけでも、本当に精一杯なのです。

 

また、苦しい気持ちを吐き出した時に否定や批判をされてしまうことも、とても苦しく感じます。否定や批判をしたくなったとしても、その時はできるだけその方の心の味方であろうとしてあげてください。

 

亡くなった赤ちゃんには何もできないかもしれませんが、目の前で「生きている」天使ママ天使パパにあなたなら何ができるか、これ以上傷を深めないためにはどのようにしたらよいか、どうかどうか優しい気持ちで考えていただけたらと思います。

力を与えてくれる言葉

人によって感じ方は違うので、中にはすぐに受け取れない方もいらっしゃるかもしれませんが、これまで挙げた言葉より傷つくことは少ないと思われます。

「わたしも一緒に泣くよ」

「涙は我慢しなくていいよ」

「悲しい気持ちを抑えなくていいよ」

「気持ちの整理はつけなくてもいい」

「(家族や親戚から)家族に甘えなさい」

「周りが支えになるからね」

「無理して笑わないでいいよ」

「できることがあったら力になるからね」

「今は前に進めなくても無理のないことだよ」

「わたしも赤ちゃんのことを忘れないよ」

「わたしの中にも赤ちゃんは生きているよ」

「もしよかったら赤ちゃんのことを聴かせてもらってもいい?」

してもらえたら嬉しいこと

なにか言葉をかけられたこと以外に、周りの方にしていただいて嬉しかったことを天使ママたちに聞いてみました。もちろん人によってさまざまなので、赤ちゃんとのお別れした時の状況や原因などによって違う場合があります。「悲しいことに触れない方がいいのではないか」と思われる方がほとんどだと思うのですが、ほとんどの天使ママが赤ちゃんのことで頭がいっぱいの時期は、ほかのことを考えたり、無理して笑顔を作ることの方が苦しいと感じます。

 

●悲しみをただ聴いてもらえること

●そばにいてくれること

●赤ちゃんの名前を聞いてもらえること

●赤ちゃんの写真を見てもらえること

●メモリアルベアなどの赤ちゃんと同じ身長体重のぬいぐるみや、赤ちゃんとして一緒にいる(持っている)ものに話しかけたりなど、赤ちゃんと同じように接してくれること

●お誕生日(1周忌)に「○○ちゃん(○○くん)お誕生日おめでとう」と言ってもらえること

 

など

赤ちゃんを亡くした方を信じてあげてください

赤ちゃんを亡くされた方を見て、いつまでも悲しんでいることをあなた自身もつらく感じていらっしゃることでしょう。早く元気になってほしい、前のように笑ってほしい、前を向いて生きていってほしい、というお気持ちも当然あるかと思います。でも、その方がいつまでも泣いているのは赤ちゃんを亡くして悲しいからだけではありません

 

「赤ちゃんを愛する気持ち」が涙やどうしようもない胸の苦しさとなって表れています。

 

それは自分でもびっくりするくらい次から次へと溢れてきます。赤ちゃんがたとえ亡くなっていたとしても、その愛する気持ちはなくなるものではないということだけでも、どうぞどうぞご理解ください。

 

驚かれるかもしれませんが、亡くなった赤ちゃんにお食い初めや、お節句のお祝い、お誕生日にはお誕生日会や赤ちゃんとしてのぬいぐるみと一緒に、『親子で』旅行やお出かけをするご夫婦も多いです。ほとんどの方は、周囲の方から赤ちゃんのお誕生日に「〇〇ちゃん(〇〇くん)、おめでとう」と、赤ちゃんに話しかけてくださることを嬉しいと感じています。

 

自分たちと同じように、見えなくても赤ちゃんの存在を感じてくださることを、心から嬉しく思います。もし、おめでとうの言葉に抵抗を感じるようでしたら「今日で〇歳だね」などの言葉も「自分たち以外に赤ちゃんを覚えてくれている人がいる」と思え、母親・父親としての笑顔になれることでしょう。

 

また、長い時間が経つと赤ちゃんのことに誰からも触れられなくなり、自分自身も涙が出なくなってくることを悲しく思っている方もいらっしゃいます。時間が経過した天使ママ天使パパはそのような気持ちを持っているということだけでも、知っていただけたらと思います。

 

悲しみの質は確かに変わって来るようです。たくさんの時間をかけて、赤ちゃんのことを温かい気持ちで思い出すことができるようになってくる方もいらっしゃいます。涙の量も減って落ち着いたように見えるかもしれません。でも赤ちゃんへの愛は、他の生きている子を育てている方とまったく同じなので、何年経ったとしてもふとしたきっかけで涙となって溢れてきます。

 

赤ちゃんを亡くした方は、とても頼りなく、力なく見えるかもしれません。少し立ち直ったように見えても、出産予定日や命日、火葬の日などには「記念日反応」で、上に挙げたような悲嘆の反応が、赤ちゃんを亡くした直後と同じようにまた心や身体に現れることも知られています。

 

以前のその方のようには完全には戻れないかもしれません。でも、長い時間をかけてでも、新しい道を見つけて自分の足で生きていくことができるようになるということを、今これを読んでくださっているあなただけでもどうぞ信じてあげてください。いつかきっと、その光を見つけることができますように・・・。